Q 別居して1年くらい経ちますが、今からでも婚姻費用を請求できますか?

A  婚姻費用分担請求は、今後の分は請求できますが、過去分については一般的には認められません。そのため、請求していなかった1年分については、請求しても認められないことが一般的です。

ただし、調停をするにしても、まずは話し合いですので、相手方が過去分の支払いに応じてくれる可能性もありますので、請求するだけ請求してみても良いと思います。

また、離婚をする場合は、財産分与の金額を決める際に、過去の婚姻費用の分担の態様が考慮されることもありますので、婚姻費用としてもらえないとしても、後に、事実上、その分の支払いが受けられる可能性はあります。

 

婚姻費用の分担に関して、その請求がいつからいつまで可能なのかについては、民法上明確には規定されていません。最高裁判所は、「家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するにあたり、過去に遡って、その額を形成決定することが許されない理由はない」(最高裁昭和40年6月30日付決定)という判断をしていますが、具体的に、どこまで遡って請求できるのかについては判断しておらず、明確ではありません。

実務上は、婚姻費用分担請求を行った時点を基準に、それ以降の分について判断されるという取り扱いがなされています。例えば、平成27年4月に別居して、平成28年4月に婚姻費用分担請求の調停を申し立てた場合、平成28年4月以降の婚姻費用の分担請求が認められる、ということです。そのため、平成27年4月から平成28年3月までの分は、もらえない、という結論になることが一般的です。

 

ただ、調停は、話し合いの場であり、その話し合いの状況、駆け引き、交渉の進め方などによって、過去分についてももらえる可能性はありますので、過去分についても請求してみるだけ請求してみるのはアリだと思います。

 

また、離婚をする場合には、財産分与についても協議するなり、裁判で争うなりすることになるのですが、その財産分与の金額を決める際に、過去の婚姻費用の分担の態様も考慮されることがあり、その場合に、もらえていなかった婚姻費用相当分を、財産分与として取得することができる可能性はあります。

この点について、最高裁判所が、「離婚訴訟において裁判所が財産分与の額及び方法を定めるについて」、「婚姻継続中における過去の婚姻費用の分担の態様」を考慮することができると判示しており(最高裁昭和53年2月27日付判決)、この判例が根拠となっています。

なお、過去の婚姻費用の分担の態様も考慮されるということは、もらえなかった場合だけでなく、払いすぎていた場合にも考慮されるということですから、もらえなかった妻側だけでなく、払いすぎているのではないかと感じる夫側にとっても使える判例だと言えます。

 

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